水産物流通情報誌― 全水卸 VOL.406試し読み
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奄美大島は鹿児島市から南へおよそ380Km、全国の離島の中では沖縄本島、佐渡島に次ぐ3番目に大きな島です。奄美市は平成18年3月にそれまでの名瀬市、大島郡笠利町、住用村が合併し新たに誕生。島全体の約4割を占め中核都市としての機能を持つ名瀬地区(旧名瀬市)、緑豊かな森林と清流を持つ住用地区(旧住用村)、広い農地と美しい海岸線を持つ笠利地区(旧笠利町)で構成されています。気候は亜熱帯海洋性で一年を通じ温暖、降水量は全般的に多く年間2,800mmの雨が降ります。昭和36年~平成2年の30年間の統計によると、平均気温が10℃以下になる日がないので、本土で言う初冬、冬、早春、春に該当する季節が明確にはなく、晩秋を過ぎるとすぐ晩春に入るイメージです。梅雨は本土より1か月も早く5月上旬に始まり6月下旬に終わります。また、1日の最高気温が25℃以上となる夏日の期間が年間112日間もあり、九州の各地の約60日間に比べ、その2倍も長いことになります。同市の西方100マイル(160km)付近には黒潮の主流が群島に並行して北東に進んでいます。その幅は60~70マイル(96~112km)、層の厚さは400mほどで、その起伏は暖流系魚群の回遊に大きな影響を与えています。沿岸はサンゴ礁に囲まれ、定着性水産動植物の好生息場であり、たこ・いか類などのほこ突き漁が営まれています。また、近海、東シナ海側には数多くの曾根と呼ばれるサンゴが着生する海域が点在し、マグロやカツオ、シイラ等の回遊魚をはじめ、ハマダイ、アオダイ、タイ類を対象とした一本釣漁業や小型延縄・素潜りによる漁業生産が営まれるほか、車エビやうみぶどう、もずく等の養殖業も盛んです。[鮮度保持への取組み]奄美漁協は漁協の生き残りをかけた取組みを模索する中、平成26年からは瀬物一本釣り漁業者全員の取組みとして、釣り上げた直後に全ての魚を活き締めする鮮度保持の取組みを始めました。具体的には、①魚の急所をさして動きを止める、②エラのつけ根を切り、血抜きをする、③海水できれいに血を流す、④海水の氷水で冷やすといった手順で活け締め・鮮度保持を行っており、これらの取組みは近海で獲れた魚より高鮮度で日持ちも良いとの評判から、一部の魚種については県外大手スーパーとの取引が始まるなど取組みへの評価が確実に広がりを見せています。[優良衛生品質管理市場]奄美漁協の荷捌き施設は昭和54年に建築された古い施設ではありますが、施設内のゾーニング、漁獲物の低温保持、器具類や長靴等の洗浄・消毒の徹底に努めています。また、漁業者による「船上活き締め脱血処理」の取組みをはじめとして市場ではウルトラファインバブルの導入を行うほか販路拡大や海外輸出を視野に入れシャーベットアイスの運用試験に取組むなどした結果、令和2年に「優良衛生品質管理市場」として認定されており、漁業者と市場が連携し衛生管理と高鮮度保持に努めることで、販売先から高い評価と信頼を得ています。奄美大島は、豊かな亜熱帯照葉樹林、広大なマングローブの森などの多様な自然環境を有し、国の特別天然記念物アマミノクロウサギをはじめとした世界的に独特で重要な絶滅危惧種や固有種の生息・生育地となっています。この自然環境や生物多様性が世界的に認められたことにより、令和3年7月26日に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」として世界自然遺産への登録が決定しま した。 (奄美市HPより抜粋)(奄美漁協荷さばき場(水産市場)の全景)(船上での活き締め)(場内の取引風景)[奄美の水産業]あやまる岬観光公園◇奄美市の概要平瀬マンカイ宮古崎黒潮の森マングローブパーク144奄美漁協水産物地方卸売市場(鹿児島県奄美市)市場のある都市市場のある都市

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